山の多い日本は、台風や大雨などで土砂崩れが発生しやすい国土環境にあります。また、近年は集中豪雨などにより、土砂崩れに関するニュースやその被害を目にする機会も増えています。こうした災害が起きた時、山地の森林伐採が土砂崩れに繋がっていると考える方も多いようですが、樹木の生い茂った斜面が崩れ落ちることも珍しくありません。土砂崩れとは、斜面表層の土砂や岩石が地中のある面を境にして滑り落ちる現象のことを言います。もともと斜面の表層は重力で常に下へ引っ張られていますが、地盤の摩擦力などそれに抵抗する力によってその位置を保持しています。樹木の細根には、網のように土壌層をつなぎ止め、基岩層の亀裂まで入り込み、すべり面(土壌層と基岩層の境)を固定する機能があります。これが、地盤の浸食や崩壊を防ぐ役割を果たしています。また、落ち葉が混ざり込んだ隙間が多い土壌は、降水時の水分を多く吸収し、地表流の発生を抑える働きがあります。しかし、森林伐採によって樹木が減少すると、すべり面のストッパーとなるものがなくなり、傾斜が急な場所ほど土砂崩れが発生しやすくなるのです。