一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 暗号資産市場の急騰とビットコインの現状分析

2024年11月、暗号資産市場は過去に例を見ない盛り上がりを見せています。中でもビットコイン(BTC)は1BTCあたり1,400万円を超える史上最高値を記録し、注目を集めています。この急激な価格上昇は、個人投資家だけでなく、機関投資家を含めた幅広い層の関心を引きつけ、暗号資産全体への新たな信頼と可能性を示す一方で、そのリスクも浮き彫りにしています。本レポートでは、暗号資産市場急騰の背景、要因、そして今後の展望について、一般投資家向けにわかりやすく解説します。

1. ビットコイン急騰の背景

ビットコインの価格が急騰した背景には、いくつかの重要な要因があります。その中で特に注目すべきは、政策的な動向やマクロ経済の変化、技術的な要因など、多角的な側面が絡み合っています。

1-1. SECによるビットコイン現物ETFの承認

2024年1月、米国証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物ETFを承認しました。この決定は、暗号資産市場にとって画期的な出来事であり、特に機関投資家にとっての参入障壁を大きく下げました。これにより、暗号資産は従来の投機的な資産という枠組みを超え、信頼性の高い投資対象としての地位を築きつつあります。

従来、暗号資産の取引は取引所を通じて行う必要があり、セキュリティリスクや資産保管の課題が指摘されていました。しかし、ETFを通じた投資が可能になることで、これらのリスクが大幅に軽減され、より多くの投資家が市場に参加しやすくなりました。その結果、新たな資金流入がビットコイン価格を押し上げる一因となりました。

1-2. 2024年の半減期

2024年4月に実施されたビットコインの4度目の半減期も、今回の急騰を支える要因となっています。ビットコインは供給量が2100万BTCに制限されているため、半減期ごとに新たに供給されるコインの量が減少します。この供給の制限は需要と供給のバランスに影響を及ぼし、希少性が高まることで価格が上昇する傾向にあります。

過去の半減期でも、価格の大幅な上昇が見られました。例えば、2016年や2020年の半減期後には、それぞれ1年以内にビットコイン価格が数倍に跳ね上がるという現象が起きています。こうした過去の傾向から、2024年の半減期も市場参加者の期待感を高め、価格を押し上げる要因となりました。

1-3. トランプ大統領再選と政策期待

2024年11月の米大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が再選し、共和党が上下両院で過半数を獲得する「トリプル・レッド」という政治的な状況が成立しました。トランプ氏は選挙期間中、「米国を地球上の暗号資産の首都にする」との公約を掲げ、暗号資産市場に対する支援姿勢を明確にしていました。

さらに、トランプ政権の政策には、ビットコインを含む暗号資産を国家の戦略的資産として位置づける方針が含まれており、市場の期待感を一段と高める結果となっています。このような政策的支援は、暗号資産市場全体の成長に寄与し、ビットコイン価格のさらなる上昇を促進しました。

2. ビットコイン急騰を支えるマクロ経済要因

ビットコインの価格上昇は、暗号資産市場特有の要因だけでなく、マクロ経済的な背景とも密接に関係しています。

2-1. インフレ懸念とビットコイン

米国におけるインフレ懸念の高まりは、ビットコイン価格を押し上げる主要な要因の一つです。トランプ政権の掲げる減税恒久化や関税引き上げ政策は、経済活動を刺激する一方でインフレ圧力を高める可能性があります。

ビットコインは「デジタルゴールド」としての側面を持ち、インフレヘッジ資産としての需要が増しています。従来、インフレ局面では金(ゴールド)がその役割を果たしてきましたが、近年ではデジタル資産としてのビットコインが注目されています。

2-2. 財政赤字の拡大と暗号資産

トランプ政権下では、財政赤字の拡大が懸念されています。これにより、米ドルの信認が低下し、非中央集権的な資産であるビットコインへの需要が高まると考えられます。過去にも、財政不安が高まる局面でビットコイン価格が上昇する傾向が見られました。

2-3. グローバル金融環境の変化

米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ政策は暗号資産市場に影響を与えています。特に、利下げが遅れる中での金利上昇は、投資家が安全資産を求める動きを助長し、その結果、ビットコインのようなデジタル資産が選択される場面が増えています。

3. ビットコイン急騰のリスクと課題

3-1. ボラティリティの高さ

ビットコイン市場の最大の特徴は、その価格変動の激しさにあります。短期間で大幅な上昇や下落が起こり得るため、リスクを適切に管理することが重要です。特に、個人投資家にとっては損失リスクが大きいことから、慎重な取引が求められます。

3-2. 規制リスク

暗号資産市場の成長に伴い、各国で規制強化の動きが見られます。例えば、税制の変更や取引所のライセンス要件の厳格化など、規制が市場の流動性を低下させる可能性があります。

3-3. 技術的進化と競争

暗号資産市場はビットコインだけでなく、多様な新興プロジェクトや技術革新によって成長しています。一方で、イーサリアムやソラナなどの競合プラットフォームが台頭し、ビットコインの優位性が相対的に低下する可能性もあります。

4. 投資家への提言

4-1. 長期的視点を持つ

ビットコインの価格は短期的には激しく変動するものの、長期的な視点での成長が期待されています。過去の価格推移を参考に、自身のリスク許容度に応じた投資計画を立てることが重要です。

4-2. 分散投資とリスク管理

暗号資産市場への投資は高リスク・高リターンが特徴です。そのため、暗号資産だけに集中するのではなく、分散投資を行い、全体のポートフォリオを堅実に管理することが推奨されます。

4-3. 情報収集の徹底

暗号資産市場は新しい技術や規制の変更など、変化が激しい分野です。常に最新の情報を収集し、それに基づいた意思決定を行うことで、成功確率を高めることができます。

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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