一般社団法人 全国個人事業主支援協会

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  • トランプ大統領の関税政策が株式市場に与えた影響【2025年4月時点】

トランプ大統領の関税政策が株式市場に与えた影響【2025年4月時点】 はじめに:関税政策と株式市場の関係 2025年4月現在、米国のドナルド・トランプ大統領による関税政策(輸入品に課す税金)の影響で、世界の株式市場は大きく動揺しています。トランプ政権は「米国第一主義」の名のもと、前例のない規模で関税を引き上げ、各国との貿易摩擦を激化させました。その結果、主要な株価指数(例えば米国のS&P500種指数やナスダック総合指数、日本の日経平均株価など)は乱高下し、市場心理(投資家の楽観・悲観のムード)も大きく変動しています。本レポートでは、トランプ大統領の関税政策の具体的内容とその背景、そして株式市場への直接的・間接的な影響について、一般投資家の方にも分かりやすく解説します。また、業種や国ごとの株価への影響、投資家心理やボラティリティ(価格変動の激しさ)の変動、主要株価指数への影響を整理し、最後に投資家が取るべき戦略や注意点について考察します。

トランプ大統領の関税政策の具体的内容と背景 トランプ政権は第二期に入った2025年初頭から、大規模な関税措置を次々と打ち出しました。その内容は非常に広範囲かつ強硬です。対象国は中国が最大の標的であり、2025年2月以降段階的に関税率を引き上げ、中国からの輸入品に最終的に54%もの関税を課すに至りました。さらに4月には中国以外のすべての国・地域からの輸入品に一律10%の関税を課すと発表し、カナダ・メキシコ・欧州連合・日本など主要貿易相手国も例外ではなくなりました。加えて、カナダ・メキシコについては全輸入品に25%の追加関税も課すと発表されました。対象品目は工業製品から農産品、消費財まで広く、ハイテク製品やスマートフォン、機械部品なども含まれています。導入理由としては、貿易赤字の是正や米国製造業の保護に加え、メキシコ経由で流入する不法移民や合成麻薬フェンタニルの対策という名目が掲げられました。ただし、実質的には財源確保や選挙向けアピールとの見方も根強く、世界経済全体への影響が懸念されています。

株式市場への直接的な影響:業種別・国別の明暗 関税政策は企業収益に直結するため、株式市場でも勝者と敗者がはっきり分かれました。ハイテク・電子機器業界では、アップルやインテルなど中国市場への依存度が高い企業が打撃を受け、大幅な株価下落が発生しました。自動車業界では、鉄鋼・アルミ関税による原材料高騰や報復関税による販売減少リスクが影響し、フォードやGMの株価が不安定に推移しました。建設機械や農業機械では、中国需要の減少と素材高騰でキャタピラーやディアが業績を下方修正しています。バイクや娯楽用品など消費財メーカーも報復関税の影響で業績悪化が目立ち、ハーレーダビッドソンは生産拠点の海外移転にまで踏み切りました。一方、米国鉄鋼メーカーなど一部素材産業は国内需要拡大の恩恵を受け短期的には業績が改善したものの、長期的には価格下落の影響も懸念されています。また、米中の対立によってブラジルなど第三国の企業が漁夫の利を得る例も見られました。

市場心理とボラティリティの変動:関税ショックによる不安拡大 関税のたびに市場は大きく反応し、ボラティリティ(変動性)が急上昇しました。2025年4月初旬には全方位関税が発表され、米国株はわずか数日で約6.6兆ドル(約880兆円)もの時価総額を失い、弱気相場入り目前まで下落しました。市場心理も悲観ムードが支配し、リセッション(景気後退)懸念が高まりました。投資家はリスク回避の動きを強め、安全資産である米国債や金、日本円への資金流入が加速しました。恐怖指数VIXも急騰し、オプション市場ではヘッジ需要が高まりました。また、トランプ大統領が株価下落を容認する発言をしたことで「トランプ・プット」への期待が崩れ、不安定さに拍車をかけました。

主要株価指数への影響:米国から日本まで広がる波及 S&P500やナスダック、ダウ平均など米国の主要指数は軒並み急落し、ナスダックはハイテク株主導で2割超の下落を記録しました。日経平均も一時3,000円近く下落し、リーマン・ショック以来の大幅安となりました。銀行株や商社株など景気敏感株が特に売り込まれ、東証では全業種が下落する全面安となりました。中国市場でも上海総合指数が軟調で、人民元は19か月ぶりの安値に下落。新興国ではインド・ブラジルなどで株価と通貨が売られました。欧州でもドイツDAXやイギリスFTSEが打撃を受け、世界同時株安の様相を呈しました。

投資家が取るべき戦略と注意点 短期的なノイズに過度に反応せず、長期目線を保つことが重要です。資産の地域・業種・資産クラス間の分散を進め、株式だけでなく債券や金など安全資産も組み入れることが推奨されます。また、企業の業績やサプライチェーン戦略を注視し、関税耐性のある企業を選別する力が求められます。特にソフトウェアやサービスなど非物理的財に注目が集まっており、ハードウェア企業とのリスク差が顕著になっています。さらに、ヘッジ手段としてオプションや先物を使うことも一部投資家には有効ですが、知識と注意が必要です。政策の転換にも柔軟に対応することが求められ、最新ニュースのチェックが重要になります。

おわりに トランプ大統領の関税政策は、世界の株式市場に多大な影響を与えましたが、投資家は冷静に対応することが大切です。分散投資と情報収集を怠らず、企業分析を通じてリスクに強いポートフォリオを築くことが、これからの不安定な時代を乗り越えるカギとなるでしょう。

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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