一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 米国債の格下げ、その先に何がある?投資初心者が知るべき資産運用のヒント

2023年、世界の金融市場に静かな衝撃が走りました。アメリカ国債の格付けが、ムーディーズによって「AAA」から引き下げられたのです。これでアメリカは、3大格付け機関すべてから最上位評価を失いました。

「でも、実際のところ何が変わるの?」「私たちの投資に影響はあるの?」

そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では以下の点をわかりやすく解説していきます。

  • 米国債の格下げとは何か?
  • 市場の反応とその裏にある本当のリスク
  • 今後想定される経済の変化
  • 初心者が意識すべき資産運用のポイント

1. なぜアメリカ国債が格下げされたのか?

ムーディーズによる格下げは突然ではなく、2023年11月の時点で警告が出されていました。それでも実際に格付けが引き下げられたことで、「いよいよか」と感じた投資家も多かったはずです。

格下げの理由は主に以下の通りです:

  • 高止まりする財政赤字:GDP比で6〜7%の赤字が今後数年間続く見込み。
  • 政治的対立による債務上限問題:政府機能停止やデフォルト(債務不履行)のリスクが再浮上。
  • 構造的な財政硬直性:議会での財政再建が進まず、制度的な改善が見込めない。

財務長官はこの格下げを「時代遅れ」と一蹴しましたが、市場はそれほど楽観的ではありません。格付けが実際の信用リスクを過小評価しているのではという懸念も浮上しています。

2. 「格下げ」の影響、実はあなどれない?

格付けが下がった直後、30年物国債の利回りは5%を超え、ドルと株価も下落しました。しかし、その後は落ち着きを取り戻しています。

「市場は気にしていない」と見る向きもありますが、実際は違います。

● 表面上は冷静、でも水面下では…

  • クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、実質的な格付けが「BBB+(かろうじて投資適格級)」相当と評価されるなど、リスクの高まりを示唆。
  • 海外投資家の離脱:30年物国債の入札で外国人投資家の参加率が減少し、英国勢が中国を抜いて第2位になるなど、保有構造も変化。
  • ドルと米国債の連動性の崩壊:以前のような「利回り上昇=ドル高」の関係が崩れ、市場が神経質になっている。

このように、市場の根底には「米国の財政への信認」がじわじわと揺らいでいる空気があります。

3. 今後の経済にどんな変化があるのか?

アメリカの財政問題は一時的な現象ではありません。特に以下の点が長期的なリスク要因となります。

(1) 財政赤字の構造化

財政再建の道筋が見えないまま、軍事費、社会保障費、減税政策が重なり、歳出は膨張。2025年以降も年100兆円規模の赤字が見込まれています。

(2) 金利上昇と企業・個人への波及

国債利回りが上昇すると、企業の借入コストが増加し、設備投資や雇用にブレーキがかかる可能性があります。個人ローンや住宅ローン金利も上昇し、消費も冷え込む恐れがあります。

(3) ドル基軸の揺らぎ

現時点でドルに代わる通貨は存在しませんが、各国の通貨準備分散が進み、ドルへの一極集中が緩やかに崩れる可能性も否定できません。

4. 投資初心者が今考えるべき資産運用の方針

格下げをきっかけに、投資家はより慎重なポートフォリオ戦略を求められる時代に突入しています。特に初心者の方に意識してほしいのは以下の点です。

(1) 地域と資産の「分散」が重要に

米国一辺倒の投資ではなく、以下のような地域・資産クラスの分散が鍵です。

  • 日本、欧州、新興国のETFや株式
  • 米ドル、ユーロ、円、豪ドルなどの通貨分散
  • 債券・株式・コモディティ(金・REITなど)の組み合わせ

(2) 「米国債=絶対安全」という思い込みは卒業

格付けが示すように、米国債も「リスクゼロ」ではありません。ただし、依然として世界最大の流動性を持つ市場であることには変わりません。

個人投資家としては、以下のようなアプローチが有効です:

  • 利回りが上昇している米国債ETFを中長期で保有
  • 米国債だけに頼らず、投資信託やロボアドなどで分散投資
  • 年齢や資産状況に応じたリスク許容度の見直し

(3) 不安定な時代だからこそ「積立」「長期」が効く

価格変動に一喜一憂するのではなく、毎月の積立で淡々と買い続ける「ドルコスト平均法」がリスク低減に繋がります。

  • つみたてNISA、iDeCoなどの非課税枠を活用
  • インデックス型投信(S&P500、全世界株式など)を軸にする
  • 手数料の安い運用商品を選ぶ

5. 最後に:格下げは「危機」ではなく「警告」

今回の格下げは、ただの金融テクニカルな話ではありません。これは私たち個人投資家にとって、「過信せず、広く分散を」「政治リスクにも備える」「経済の本質を見極める」ための警告と捉えるべきです。

たしかにアメリカ経済の成長力は健在であり、イノベーションの源泉であることに変わりはありません。しかし、それに依存しすぎることなく、リスクとどう向き合うかが問われる時代になりました。

大切なのは、情報に振り回されすぎず、自分の目的に合った運用スタイルを築くこと。

これからもこのブログでは、初心者でも分かりやすい視点で、経済・金融の最新動向と資産形成に役立つ情報をお届けしていきます。ぜひ、ブックマークやSNSでのフォローをよろしくお願いします!

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東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

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