プロジェクトがうまく進まない原因としてよくあるのが、スコープの曖昧さです。最初に「これをやる」と決めたはずなのに、途中で「あれもこれも」と作業が増えていくことがあります。こうしたスコープの膨張は、関係者の期待に応えようとした結果だったり、要件の認識にズレがあったりすることが多いです。そして気がつけば、当初の予算やスケジュールが大きく崩れてしまっている。これが、いわゆる「スコープクリープ」と呼ばれる状態です。
スコープ制御は、それを防ぐための手段です。簡単に言えば、プロジェクトの作業範囲をきちんと定めて、それを維持しながら、必要な変更は正しく管理することです。ありがちなのが、「ちょっとこれもやってほしい」といった軽い要望をその場で受け入れてしまうケースです。関係性を悪くしたくない気持ちや、大した手間ではないと感じてしまう心理も理解できますが、そういった積み重ねが後で大きな歪みを生むことになります。
大切なのは、どんな小さな変更でも、まずは「何が変わるのか」を明確にすることです。その変更によって工数がどのくらい増えるのか、他の作業に影響が出ないか、納期や品質にどんな影響があるのかを把握します。感覚ではなく、具体的なデータや根拠をもとに判断することが重要です。そして、関係者としっかり合意を取ります。プロジェクトの進行中に「これは最初からやる予定だった」と言われてしまうと困るので、やるならやる、やらないならやらない、やるなら条件を明確にするといった線引きをきちんとする必要があります。
もちろん、スコープを守るというのは「一切変更を受け入れない」という意味ではありません。状況が変われば、スコープだって変わるものです。ただし、それには筋を通す必要があります。正しい変更手続きと影響の評価、そして関係者の合意。これらが揃っていれば、たとえ計画が変わっても誰も不満には感じませんし、あとで「そんな話は聞いていない」と言われることもありません。
スコープ制御という言葉は少し堅く感じるかもしれませんが、実際には「やること・やらないことをはっきりさせる」というだけの話です。そしてその裏には、「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、信頼関係を保つという目的があります。プロジェクトを混乱させないための、ごく基本的な姿勢のひとつと言えるでしょう。