今月は観たい映画のBD&DVDが発売される。
タイトルは「家族を想うとき」。
イギリス、フランスとベルギーの合作で、イギリスの巨匠、ケン・ローチ監督が昨年に発表した作品である。日本では文科省の推薦作品として、昨年末に公開された。
ケン・ローチ監督は「万引き家族」の是枝監督がリスペクトする社会派の映画監督であり、これまでにも貧困や不平等に苦しむ社会的弱者をテーマにした多くの作品を世に出している。
そして、パルムドールを受賞した2016年の前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」を最後に80歳で引退したが、引退を撤回して撮ったのが本作である。
フードバンク(無償で食料が受け取れるボランティア)にいる労働者の話を聞くうちに、これは撮らなければいけないと思ったと、インタビューで語っていた。それは、個人事業主と呼ばれるゼロ時間契約労働(勤務時間の決まりがなく、自分の都合で働けるが、一切の社会保障がない労働形態)である。
勤務時間の決まりがないため、ノルマを果たすために何時間働いても労働基準法は適応されず、経費は自分で負担し、いつ失業するかも分からず、社会保障はなく、ミスや事故は全ての責任を負い、廃業しても失業率にもカウントされない、個人にとってリスクの大きな労働形態である。しかし、企業側は社員を雇うことでの責任やコストがなく業務が遂行される、都合のいい新たな事業形態である。企業のオペレーションには規則と罰則があり、スケジュールも自由ではない。
この現状を世に問うため、再びメガホンを取り、テーマに選んだのが宅配ドライバーである。マイホームの購入を夢見て、個人事業主の宅配ドライバーとして開業する父と家族の姿を通じ、現代の労働環境にスポットを当てている。
原題は「Sorry We Missed You」。
これは、宅配で不在時に投函する不在連絡票に書かれている言葉とのことで、「残念ですが、ご不在でした」といった意味のようだが、主人公とその家族の生活にも重なってくることを連想させるタイトルである。
また、登場するエキストラのドライバーたちは現役または、元ドライバーであり、配達のエピソードもドライバーのインタビューによる実話とのことなので、宅配ドライバーにはリアルな内容になっていそうだ。
個人事業主という業態の一面を切り取ることで、現代の働き方と社会構造を浮き彫りにした作品として、同時に、邦題にあるような、家族のあり方を描くドラマとしても、注目すべき映画であると思う。
そして、これからも個人事業主という名の働き方が、業務の委託者、請負者と社会のためになるよう、より改善されていけば幸いだ。
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