
創業時や事業拡大を検討する多くの事業者にとって、日本政策金融公庫の融資は心強い味方です。しかし、「公庫だから審査は通りやすいだろう」と安易に考えてしまい、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースも少なくありません。
当社では、これまで多数の創業者や中小企業経営者の融資申請をサポートしてきました。その中で「もっと早く相談してくれていれば…」という事例を何度も見てきました。
この記事では、実際に多い公庫融資の失敗事例とその具体的な改善策を紹介します。この記事を読むことで、「なぜ落ちるのか」「どうすれば審査に通るのか」が分かり、無駄な時間や労力を防ぐことができます。
1.公庫融資は誰でも通るわけではない
日本政策金融公庫は、民間金融機関に比べて比較的融資が受けやすいと言われます。特に「新創業融資制度」などは、無担保・無保証で利用できる点から多くの創業者に活用されています。
しかし、日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、国のお金を融資の原資としています。そのため、ビジネスの実現可能性、返済能力、計画の妥当性などが総合的に評価され、場合によっては「相談段階で断られる」「書類を出しても審査落ちする」ことも十分にあります。
とくに初回融資や創業時の融資では、融資金額の妥当性や事業者の経験・姿勢がシビアに見られます。事前準備を怠ると、「なぜ通らなかったのかも分からないまま不合格になる」ことすらあります。
2.よくある失敗事例とその改善ポイント

2-1. 必要性が疑わしい「過剰な投資計画」
例えば、制度上、新規開業資金では最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで)の融資枠が設けられています。
しかし、これをそのまま鵜呑みにして「どうせ上限まで借りられるだろう」と、根拠のない設備投資計画を立てるケースが後を絶ちません。
実際に、工場での野菜栽培(全天候型の野菜工場)を開業したいとして、「設備資金として3,000万円、運転資金に1,000万円」といった計画を提示した創業者が、融資担当者から「投下資本が過大である(その金額での相談は現実的ではない)」と断られた事例もあります。
改善策としては、「スモールスタート」を前提とした初期投資の設計、業界相場を踏まえた見積もり、投資回収の根拠づけが重要です。
2-2. 売上・利益の見積もりが甘すぎる
初月から黒字、2か月後には月商500万円など、あまりにも楽観的な売上予測を計画書に記載する方は少なくありません。実績がない段階で高い売上を見込む場合、その根拠が必要です。
市場調査、競合比較、稼働日数や客単価などから「論理的な数字」を構築し、万一の赤字月も想定した保守的な計画の方が、逆に信用を得られやすい傾向にあります。
2-3. 自己資金に親族からの借入を含めている
「親から借りた資金」など将来的に返済が必要になる資金や融資審査用の「見せ金」と疑われるような資金は、審査上では自己資金と見なされません。公庫では、自己資金の定義を「返済義務のない、自力で蓄積した資金」としています。
理想としては、半年以上かけてコツコツ計画的に積み立てること、援助を受ける場合は「贈与」として証明できる形に整えることが必要です。
2-4. 創業動機や経験の一貫性がない
創業理由が「好きだから」「やってみたかったから」では、融資担当者にとっては不安材料です。業界未経験者が無計画に参入しようとしているように見えると、審査の通過は難しくなります。
職歴や資格、これまでの関連経験などから「自分が成功する必然性」をストーリーとして一貫させましょう。
2-5. 面談時の準備不足・内容の理解不足
事業計画書の中身を把握していない、質問に対して曖昧な回答しかできない。こうした姿勢は、計画そのものへの信頼性を損ないます。
数字や売上根拠の説明も含め、「自分の言葉で語れること」が、融資担当者からの評価を大きく左右します。ロールプレイや模擬面談の実施がおすすめです。
3.制度上の上限額は「借りられる額」ではない

例えば、新規開業資金の制度上の上限額は設備資金で7200万円(運転資金で最大4,800万円)ですが、実務的には新規の融資案件で無担保・無保証などを希望する場合は、1,000万円が“現実的な壁”となっています。
融資審査では、「いくら借りたいか」ではなく、「いくら返せるか」が問われます。計画上の借入金額は、できれば「5年以内に返済可能な金額」に抑えることが必要となります。
また、借入希望額が妥当かどうかは、自己資金とのバランス、事業の利益構造、事業主の経験値などによって判断されます。制度の数字だけに頼らず、地に足のついた金額設定が求められます。
4.審査に落ちないために押さえるべき3つの視点

視点①:「金額の妥当性」と「投資の段階性」
・借入金は事業規模に見合った範囲内か?
・一括で大きく借りるより、段階的に調達した方が回収可能性が高いと見られる
・設備投資と運転資金のバランス、支出優先順位も評価対象
たとえば、最低限の厨房機器で開業し、売上拡大後に内装改修を行うといった「ステップ設計」なら、現実的で納得感も高くなります。
視点②:「計画の整合性とロジック」
・売上・仕入・経費・利益・返済額の関係が整合的か?
・無理のないキャッシュフロー設計がなされているか?
・仕入原価率や販管費率が、業界平均から大きく外れていないか?
一見成功しそうな数字でも、計算根拠が曖昧だったり、計算式が破綻していたりすると、信頼は得られません。
視点③:「経営者としての信頼性」
・経営に対する覚悟・熱意が伝わるか?
・準備不足ではなく「自分の事業に向き合ってきた姿勢」が見えるか?
・初年度赤字の場合の対応策など、リスクに対する備えがあるか?
過去に経験がなくても、準備の深さとリスク管理の姿勢で信頼を得ることは十分可能です。
5.融資に強い事業計画書を作るには?

ポイント①:「自分らしさ」を反映した構成に
融資担当者は、時には1日に何件もの計画書を読んでいます。その中で「この人の事業は応援したい」と思わせるためには、事業主の人柄・想い・経験がにじみ出た構成が必要です。
・なぜこの事業をやるのか?
・自分はどんな経験・スキルを持っているか?
・誰のどんな課題を解決するのか?
この3点が論理的かつ簡潔にまとまっていれば、非常に印象が良くなります。
ポイント②:図解・数値による見える化
計画書は単なる作文ではありません。収支計画や競合分析などは、視覚的な資料や数表にまとめることで、理解度が飛躍的に上がります。
・収支予測表、月別のキャッシュフロー
・価格帯比較表(自社 vs 競合)
・顧客ターゲットの図解(年齢・性別・ライフスタイルなど)
こうした資料が添付されていると、「本気度」が伝わり、加点につながります。
ポイント③:第三者のレビューを受ける
事業計画書を一人で仕上げると、どうしても主観が入りすぎたり、気づかない矛盾が残ったりします。
専門家のレビューを受けることで、見落としや弱点が明確になります。
当社では、創業計画書の添削やブラッシュアップを支援しています。通るかどうか不安な方、落ちた経験がある方には特におすすめです。
6.まとめ
公庫は「支援する機関」ではありますが、それ以上に「返済されるかどうか」を見極める金融機関でもあります。
融資を受けるためには、単なる希望ではなく、数字とロジックに裏打ちされた説得力のある計画が必要です。
・設備投資は過剰ではないか?
・売上予測に根拠はあるか?
・自己資金は十分かつ、正当な形で準備されているか?
・経営者としての信頼を得られるか?
これらを客観的にチェックし、修正するだけで、融資成功率は大きく変わります。
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