
創業を考えたとき、多くの方が最初に悩むのが資金調達です。
その中でも特に多いのが、 「日本政策金融公庫の創業融資と、補助金はどちらを先に使うべきなのか」 という疑問です。
インターネットや書籍を調べると、「補助金は後から」「融資を先に」といった断片的な情報は見つかりますが、なぜその順番なのか、逆にすると何が起きるのかまで踏み込んだ説明はあまり多くありません。
実際の現場では、この順番を誤ったことで、
といったケースも少なくありません。
この記事では、創業支援の現場で多くの事例を見てきた立場から、創業融資と補助金をどういう順番で使うべきか、そしてよくある失敗例とその回避策を、実務目線でわかりやすく解説します。
順番を考える前に、まず理解しておきたいのが、創業融資と補助金は、そもそも役割がまったく異なる制度だという点です。
創業融資、とくに日本政策金融公庫の創業融資は、
「これから事業を始める人が、事業を立ち上げるための資金を確保する制度」です。
一方で補助金は、「すでに事業を行っている、または行う前提が整っている事業者が、新しい取り組みや設備投資を行う際の費用の一部を後から補助する制度」という位置づけになります。
ここで重要なのは、補助金は原則として先に支払いが発生し、受給できるのは後だという点です。
つまり、いったん事業者自身が費用を立て替え、その後に補助金が支給されます。
この構造を理解せずに補助金を先に考えてしまうと、資金繰りの計画に大きなズレが生じます。
結論から言えば、創業期における基本的な考え方は、「まず創業融資で土台を作り、その後に補助金を活用する」という順番です。
これは単なる慣習ではなく、制度設計と審査実務の両面から見て、もっとも合理的な流れだからです。
創業融資は、事業を始める前後の段階で申し込むことができ、開業資金、設備資金、運転資金といった「事業の立ち上げに不可欠な資金」を一括して確保することが可能です。
一方、補助金は「事業が動いていること」「実行体制があること」を前提に、さらに一段上の取り組みを行う際に使われるケースが多くなります。このため、補助金だけを当てにして創業を進めようとすると、「先にお金が出ていくのに、入ってくるのはずっと後」という
非常に不安定な状態になってしまいます。
実際によくあるのが、「補助金があるから大丈夫だと思っていたが、手元資金が足りなくなった」というケースです。
補助金の多くは、採択されてから実際にお金が振り込まれるまでに、半年から1年以上かかることも珍しくありません。
その間に、
設備代金の支払い
外注費の支払い
家賃や人件費などの固定費
が発生します。
創業融資を受けずに補助金を先行させてしまうと、この「つなぎ資金」を用意できず、結果として追加で融資を申し込むことになります。しかしその時点では、
すでに資金繰りが苦しくなっている
計画と実績がズレている
といった理由から、融資審査が不利になることもあります。
公庫融資の審査では、補助金が入る前提でないと成り立たない計画」は評価が下がります。
例えば、
といった計画は、事業の自立性が低いと判断されがちです。
公庫が見ているのは、「補助金がなくても、最低限事業が回るか?」という点です。
では、どのように組み合わせるのが理想なのでしょうか。
ステップ① 創業融資で「土台資金」を確保
まずは公庫の創業融資で、
を確保します。
この段階では、補助金は「将来の選択肢」程度に位置づけるのがポイントです。
事業が動き始めた後に、
といった成長投資に補助金を活用します。
この流れであれば、
という、非常に健全な構造になります。
すべてのケースで融資先行が正解、というわけではありません。
以下のような場合は、補助金先行も検討余地があります。
ただしこの場合でも、融資との整合性を事前に整理しておくことが必須です。
補助金入金までの資金繰りを可視化することで、
「いつ資金が足りなくなるか」が明確になります。
補助金は“なくても回る計画”にする
融資審査では、補助金に依存しない計画が高く評価されます。
専門家を最初から巻き込む
融資と補助金は、同時に設計しないと整合性が崩れやすい分野です。
創業融資と補助金をセットで支援している専門家であれば、
を一体で設計できます。
結果として、
というメリットが得られます。
創業期の資金調達で最も重要なのは、「どの制度を使うか」ではなく「どの順番で使うか」です。
多くの創業者にとっての基本形は、
創業融資 → 補助金
この順番を守るだけで、資金繰りの安定性は大きく変わります。
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