テレワークやクラウドサービスの普及により、個人事業主でも顧客情報、請求書、契約書、業務データなど、重要な情報をデジタルで扱う機会が増えています。こうしたデータは、万が一漏えいすると取引先からの信頼低下や損害賠償につながる恐れがあり、事業継続に大きな影響を与えます。そのため、個人事業主であっても「データ暗号化」を理解し、適切に活用することが重要です。
データ暗号化とは、第三者に内容を読み取られないよう、データを特殊な方式で変換することを指します。暗号化されたデータは、正しい「鍵」を持つ人だけが元の状態に戻して閲覧できます。仮にパソコンやUSBメモリを紛失したり、クラウドサービスが不正アクセスを受けたりしても、暗号化されていれば情報漏えいのリスクを大幅に下げることが可能です。これは「万が一」に備えるための、非常に有効なセキュリティ対策です。
個人事業主が特に注意すべき暗号化対象としては、顧客名簿、見積書・請求書データ、会計ソフトのバックアップ、メールの添付ファイルなどが挙げられます。これらの情報には個人情報や取引内容が含まれているため、外部に流出した場合の影響が大きくなります。特にノートパソコンや外付けストレージは持ち運ぶ機会が多いため、端末自体の暗号化が有効です。WindowsやMacには標準でディスク暗号化機能が備わっており、設定を有効にするだけで、デバイス全体のデータを守ることができます。
また、クラウドサービスを利用する際にも暗号化は重要なポイントです。多くのクラウドサービスでは、保存時や通信時にデータが暗号化されていますが、すべてが同じ水準とは限りません。サービス選定時には「通信の暗号化(HTTPS)」や「保存データの暗号化」に対応しているかを確認することが大切です。さらに、クラウドに保存する前に、ファイル自体を暗号化してからアップロードすることで、二重の安全対策になります。
メールでのデータ送信も注意が必要です。見積書や契約書をそのまま添付して送信すると、誤送信や盗み見のリスクがあります。対策として、パスワード付きZIPファイルやPDFの暗号化機能を活用する方法があります。ただし、同じメール内でパスワードを送るのは安全とは言えません。可能であれば、パスワードは別の手段(電話や別メール、チャットなど)で伝えることが望ましいでしょう。こうした小さな配慮が、情報漏えいを防ぐ大きな差になります。
一方で、暗号化には「鍵」の管理が欠かせません。どれほど強力な暗号化を行っても、パスワードが簡単だったり、メモとしてパソコンに保存していたりすると意味がありません。推測されにくいパスワードを設定し、使い回しを避けることが基本です。また、パスワード管理ツールを活用することで、安全かつ効率的に管理することができます。個人事業主は一人で多くの業務をこなすため、管理の手間を減らしつつ安全性を高める工夫が重要です。
最後に、データ暗号化は「特別な知識がある人だけの対策」ではありません。OSの標準機能やクラウドサービス、一般的なオフィスソフトを活用するだけでも、十分な効果を得ることができます。重要なのは「守るべきデータを意識すること」と「日常的に暗号化を使う習慣を持つこと」です。個人事業主にとって情報は大切な資産です。データ暗号化を正しく理解し、日々の業務に取り入れることで、安心して事業を継続できる環境を整えていきましょう。
2026.01.09