一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

インバウンドの加速により我が国の外国人旅行客が急増している昨今、今まで海外では注目されていなかった観光地でも外国人旅行者の姿を見ないことはありません。

この追い風を受けて旅行業に乗り出そうと考える経営者も少なくないことでしょう。しかしながら我が国では、旅行業に携わる者の登録制度を設けているため、旅行業者として一定の「要件」を満たしたうえで登録する必要があります。ところが旅行業の場合、数ある許認可等の中でもこの「要件」が非常に高いハードルとなります。

まず第一のハードルとなるのが「資金力」です。単に事務所や店舗の設備資金というわけでなく、旅行業登録の為には高額な「営業保証金」を法務局に供託する必要があります。これは旅行業者が倒産等をした場合の旅行者保護として必要となるお金です。その金額は、海外を対象とした募集型企画旅行を扱う「第一種」は7,000万円、国内を対象とした募集型企画旅行を扱える「第二種」であれば1,100万円、隣接市区町村内に限定した募集型企画旅行を扱える「第三種」であれば300万円と、いずれも気軽に用意できる金額ではありません。ただし、その救済として任意の旅行業協会に入会した場合、それぞれ上記の1/5の金額を協会に分担金として預ければ、要件を満たせるという制度も設けられてます。つまり第三種であれば60万円の分担金を預ければ良いということになります。とはいえ各協会には入会費等もありますので、第三種でさえ分担金も合わせれば入会時に百数十万円程度は必要になります。

そして第二のハードルとして、「旅行業務取扱管理者の設置」という関門が立ちはだかります。旅行業登録を行うためには営業所に一人「旅行業務取扱管理者」を設置する必要がありますが、この旅行業務取扱管理者になるためには国家資格を取得する必要があります。ところが、この資格試験がなかなかに難しい・・・。コロナ以降、弊所にも度々、旅行業登録申請の相談はあるのですが、この資格を前に諦めてしまう相談者様は数多くいらっしゃいます。宅建士などと同様に資格取得用の講義を行っている予備校もありますが、難易度としては宅建よりも難しいとか・・・。一般的に数カ月は覚悟する資格になります。コロナ禍以降、インバウンドで日本国内の企画旅行を手掛けたい日本好きの外国人経営者様も増えてますが、日本人でも難しい資格なので、ある程度日本語に長けていても、外国の方では尚更難しい試験となります。

そんな道のりが険しい旅行業ですが、円安の影響で海外も国内も日本旅行に目が向きがちな昨今において、まさに「今が旬」の業務ともいえるかもしれません。

ちなみに、この旅行業登録・・・建設業許可やビザ申請のように多くの行政書士が経験のある申請ではないため、我々行政書士の間でも比較的扱ったことのある事務所は少ないニッチな業務ではあります・・・。

 

The following two tabs change content below.

上松 功二郎

最新記事 by 上松 功二郎 (全て見る)

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア