はじめに
シッターをご依頼いただく際に、多くの保護者様が最初にご心配されるのが「うちの子、人見知りなんですが大丈夫でしょうか?」という点です。実際にお打ち合わせやメッセージでも、
「知らない人を見ると泣いてしまうんです」
「初対面では慣れるまで時間がかかると思います」
「泣かせてしまって申し訳ないです」
といったお声をいただくことが少なくありません。
しかし、人見知りはお子様の健やかな成長の証でもあり、決して「悪いこと」ではありません。むしろ「知らない人と知っている人を区別できるようになった」「安心できる大人を求める気持ちが育っている」という、大切な発達のひとつです。
本コラムでは、人見知りのお子様への理解とケア、シッターがどのように関わっていくかについてお伝えし、保護者様に少しでも安心していただければと思います。
人見知りは多くの場合、生後6か月頃から1歳半頃にかけて強く出やすくなるといわれています。赤ちゃんが「知らない人」と「よく知っている人」を認識できるようになることによって、見慣れない相手に対して不安を感じ、泣いたり抱っこを拒否したりするのです。
ただし、人見知りの時期や強さには個人差があります。3歳を過ぎても慎重な性格から初対面に時間がかかるお子様もいれば、赤ちゃん期からあまり強く出ないお子様もいます。大切なのは「その子らしさ」として受け止めることです。
人見知りに関して保護者様が抱かれる不安には、いくつか共通点があります。
初対面で泣き続けてしまわないか心配
泣いたらシッターさんに迷惑をかけてしまうのでは
シッターが嫌いになってしまわないか
出かける時に後追いで大泣きしないか不安
これらの心配はとても自然なことです。特に「泣いたら申し訳ない」とお気遣いくださる方は多いのですが、シッターにとって泣くことは自然な反応であり、むしろ「しっかり保護者様と絆ができている証拠」と前向きにとらえています。どうぞご安心ください。
人見知りのお子様にとって、知らない人から急に抱っこされたり声をかけられたりすることは大きな不安の原因になります。シッターはまず「そばにいるだけ」という姿勢を大切にします。保護者様と自然に会話しながら、お子様の視界に入る位置に座り、興味を持ってくれるのを待ちます。
人見知りの時期には、保護者様がそばにいるだけでお子様は安心します。そのため、最初のサポートでは保護者様と一緒に遊ぶ時間を設けたり、見守りながら関わったりすることがあります。保護者様を無理に離さず、お子様が自分のペースで安心できるよう心がけます。
お気に入りのおもちゃや絵本を通じてお子様と関わると、自然と距離が縮まります。例えば、保護者様から「このぬいぐるみが好きです」と教えていただいたら、そのアイテムをきっかけに声をかけます。お子様にとって安心できるものを介して関わることで、「この人と一緒に遊んでも大丈夫かも」と感じやすくなります。
泣くことは自然な感情表現です。シッターは泣き止ませることを最優先にはせず、まず「不安なんだね」と受け止め、落ち着ける環境を整えます。抱っこや背中をさする、声のトーンを落とすなど、お子様が安心できる方法を一緒に探していきます。
「泣いてしまうかも」と事前に教えていただけると、シッターも心の準備ができ、より丁寧に対応できます。遠慮なくお伝えください。
ぬいぐるみ、毛布、おしゃぶりなど「これがあれば安心する」というものがあれば、ぜひお知らせください。シッターにとって強力な味方になります。
保護者様が出かける際、お子様が泣くのはよくあることです。その際は「すぐ戻るからね」「楽しく遊んでいてね」と短く笑顔で伝えていただくと、お子様は安心しやすくなります。逆に長く引き延ばすと不安が強まる場合があります。
泣いてしまったからといって「迷惑をかけてしまった」と思わなくて大丈夫です。シッターはそうした場面も含めてサポートする存在です。どうぞ安心してお任せください。
以前、1歳のお子様をお預かりしたとき、最初は私の顔を見るだけで泣き出してしまいました。そこで無理に近づかず、保護者様と一緒に床に座って絵本を眺めていると、数分後には少しずつ私の絵本に興味を示してくれるようになりました。30分後には自分から玩具を手渡してくれ、1時間後には笑顔で追いかけっこができるほどに。
このように、人見知りは「時間」と「安心できる環境」があれば必ず和らいでいきます。そして、初めての信頼関係が築けた瞬間のお子様の笑顔は、かけがえのない宝物です。
人見知りは、お子様が健やかに育っている証拠であり、ご家庭にとってもシッターにとっても大切にすべき成長の一過程です。
シッターとしては、
無理に距離を縮めない
保護者様を安心基地として尊重する
遊びやグッズを介して関わる
泣いても受け止める
という姿勢を大切にしています。
保護者様におかれましても、「泣いたらどうしよう」とご心配なさらず、安心してお預けいただければと思います。人見知りの時期は必ず過ぎていきますし、シッターと一緒に少しずつ「新しい人との出会い」を楽しんでいけるようになります。
お子様の笑顔と成長を、一緒に見守らせていただけることを心より嬉しく思っております。