デジタル化が進む中、個人事業主にとって情報セキュリティ対策は、ビジネスの信用を守るために欠かせない要素です。その中でも身近で被害が多いのが「フィッシング詐欺」です。フィッシング詐欺は、メールやSMS、SNSなどを利用して偽の通知を送り、ログイン情報や個人情報を盗み取る手口です。特に一人で業務を行う個人事業主は、事務作業・経理・営業・顧客対応をすべて自身で行うため、偽メールに気づく時間や余裕がないケースも少なくありません。被害が発生すると、口座情報や顧客データが盗まれたり、売上金を不正送金されたりするなど、事業運営に大きな影響が出る可能性があります。そのため、日頃から警戒心を持ち、正しい対策を理解することが重要です。
まず、最も多いのがメールやメッセージを利用したフィッシングです。「アカウントが停止されました」「支払い方法を更新してください」など、不安をあおる内容でリンクをクリックさせようとする手口が典型です。送信元には一見本物に見える企業名が使われますが、よく見るとドメインが正規のものと異なっている場合があります。例えば、有名ECサイトの名前をかたっていても、アドレスの一部が似ているだけで本物とは全く別物というケースはよくあります。メールが届いた際には、まず送信者アドレスを確認し、「本当にこの企業が使うドメインなのか」をチェックする習慣を持ちましょう。もし少しでも不審に感じた場合は、メール内のリンクを押さず、公式サイトを直接開いて内容を確認することが安全な方法です。
次に、フィッシングの入口となるURLの確認も欠かせません。URLは細かな違いがあっても見た目では分かりづらいため、詐欺者が強調したい部分を正規サイトに似せて作る場合があります。具体的には、secure-〇〇.com や 〇〇-support.com など、一見安心できそうな単語を配置することで、本物らしさを演出するのが典型的です。リンクを開く前に、マウスカーソルを合わせる(スマホなら長押しする)ことで実際のURLを確認できます。そこで不自然な文字列が含まれていたり、企業名と無関係なドメインであれば、クリックしないことが重要です。また、金融系やクラウドサービスにログインする際は、ブックマークからアクセスする習慣をつけることで、不正サイトへ誘導されるリスクを大幅に減らせます。
さらに注意すべき点として、最近はSMS(ショートメッセージ)を使った「スミッシング」も増加しています。携帯会社や宅配業者の名前を騙り、偽サイトに誘導する手法です。SMSはメールよりも「正規通知らしく」見えるため、つい信じてしまう被害が多発しています。SMSのリンクは特に危険度が高いため、原則としてアクセスしないことをおすすめします。不安な場合は、公式アプリや公式サイトのマイページから状況を確認することで、偽通知への対応を回避できます。
加えて、自分自身を守るためには、メールソフトのセキュリティ設定やフィルタリング機能を活用することも効果的です。多くのメールサービスには迷惑メール対策機能があり、怪しい送信元を自動で識別して受信トレイに届く前にブロックしてくれます。ただし、100%防げるわけではないため、最終的には利用者自身の判断が鍵になります。定期的にOSやアプリのアップデートを行い、ウイルス対策ソフトを有効にしておくことで、もし誤ってリンクをクリックしてしまった場合でも被害の拡大を防ぐことができます。
最後に、フィッシング詐欺は「自分には関係ない」と思っている人ほど狙われやすいという特徴があります。特に個人事業主は、普段からメール・請求書・サービス通知を大量に扱うため、偽メールが混ざっていても気づきにくい環境にあります。だからこそ「送信者の確認」「URLの確認」「リンクをすぐ押さない」という基本を徹底し、日頃から疑う姿勢を持つことが大切です。万が一不審なメールを受け取った場合は、周囲の専門家やサービス窓口に相談することで、被害を未然に防げます。
フィッシング詐欺は日々進化しており、手口が巧妙になっています。しかし、一つひとつの確認作業を習慣化するだけで、防げる被害は確実に減らせます。個人事業主として、自分の事業と顧客情報を守るためにも、情報リテラシーを高め、日常の中で安全なメール対応を徹底していきましょう。
2025.12.06