一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

  • 東京オリパラは中止?影響は?
東京五輪・パラリンピックは予定通り2021年に開催できるのか、というのは今後の日本経済、そして株式市場を考える上で大きなテーマです。
東京五輪・パラリンピックの開催にあたって考えなければいけない要素は、次の通り大きく2つの要素が挙げられます。一つ目が新型コロナウイルスの感染状況及びワクチン摂取の状況であり、二つ目が国内世論及び国際世論です。
まず感染状況ですが、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県で緊急事態宣言の2週間延期が決定しました。依然として感染者数は一定数存在し、さらに先週よりも多少ではありますが増加傾向に転じました。日本国内ではワクチン接種が想定よりも大幅に遅れており、東京五輪・パラリンピックが開催されるまでは大半の日本国民がワクチンの接種を受けることは非常に難しい状況となっています。尚、接種回数は3月5日時点で米国が8050万回、中国が5257万回、英国が2177万回であるのに対して日本は僅か3.9万回です。また人口100人あたりの累計接種回数は、イスラエルが93.2回、UAEが63.1回、英国が32.4回、米国が24.3回であるのに対して日本は0.0回となっており、日本の遅れがいかに深刻であるかがよく分かると思います。まだ感染しておらず、そしてワクチン接種も完了していない方が日本国内に多くいる中で、国内外から多くの方を受ける事ははっきり言って無謀です。
また各国で感染状況やワクチン接種状況がバラバラである中で、全ての国が選手を選び、そして日本に派遣することが可能なのでしょうか。参加できる国と参加できない国を分断してでもオリンピック・パラリンピックを行うことが、オリンピック・パラリンピックの理念に則っているとは到底思えません。
世論の動向を見ると、開催地である日本における開催反対の声が突出しています。マスコミ各社のデータによると今年の東京オリパラの開催を再度延期すべき、もしくは中止すべきとする意見が7割前後に達しています。また、日本オリンピック委員会(JOC)前で、五輪中止や返上を叫ぶデモも行われ、また著名人が聖火ランナーを辞退するなど、国内世論は中止・延期に大きく傾いています。
こうした状況を踏まえると、私は今年の東京オリンピック・パラリンピックは中止・延期せざるを得ないと予想しています。
それでは東京オリンピック・パラリンピックを中止した場合、どの程度の経済損失が発生するのでしょうか。2021年単年度のGDPへの直接的な影響を見た場合、損失額と経済への押し下げ効果は、消費刺激効果の消失による4989億円に加え、放送関係費701億円の消失で合計5690億円の損失が発生し、GDPは0.11%のマイナスになるとの試算が国内大手証券会社から発表されています。また長期的な経済損失については約4兆5151億円発生すると試算されています。大会運営費や参加者及び観戦者の消費支出、家計消費支出、国際映像制作費、企業マーケティング活動費などの殆どが失われるとされ、その額は約3兆4624億円と推計。さらにスポーツや文化の振興、留学生の増加による経済効果が半減することなどから、約1兆527億円の経済効果が失われるとしています。加えてレガシー効果や波及効果への長期的な押し下げ効果が甚大になる可能性だけでなく、今後の政権運営にも影響を及ぼしかねず、それによる経済ダメージも加わる恐れがあるとしています。
間も無く聖火ランナーがスタートします。コロナに打ち勝った証明としての東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されることを願いつつも、最悪のシナリオに備えて準備をすることも忘れてはいけません。東京オリンピック・パラリンピックの中止・延期はこれまで書いたように、日本経済に短期的・長期的に大きな影響が出てきます。これまで順調だった投資マインドにもマイナスの影響が出てくることも否定できません。審判の時は刻一刻と近付いています。
The following two tabs change content below.

東葛 コンサルティング

投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務、PE(プライベート・エクイティ)業務に従事していました。 経済、投資等についてのアドバイスを行っています。

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア