一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

前回のコラムでは、現在の日本の食糧自給率について軽く触れました。

先進国の中でも群を抜いている日本の食料自給率の低下は、国内でも大きな問題として横たわっています。

食糧自給率38%という数字ですがこれはカロリーベースとしての表示なので、詳細な部分が見えにくくなっております。農林水産省がまとめた統計データをもとにさらに詳しく紐解いてみます。

まず2019年の統計から穀物類を見ると、アメリカは自給率が116%、カナダは185%、フランスは187%などとなっておりますが、それに対して日本は28%です。アメリカやカナダ、フランスの穀物類自給率は100%以上ですが内訳の主軸は小麦であり、米はほとんどありません。

日本での穀物自給率28%の内訳を見るとおよそ60%程度が食用穀物と記されております。食用穀物とは小麦、ライ麦、米、そばを含めていますが、日本の場合、その主軸は米であることが推察できます。

いずれにせよ、日本の食糧自給率が概して38%と言われますが、常温備蓄が可能である穀物は28%しか生産できておらず、さらに米に至っては28%の中の6割程度に過ぎません。

直近の具体的な数字を見ればわかりますが、令和4年の米の生産量は主食用米で670万1000tとなっています。

この生産量を1億2千万人で単純に割り算すると、およそ半年から10ヶ月分しかない計算になります。

逆に日本において自給率の高い食料品目は何かと言うと、2019年の統計では卵類が97%、野菜類が80%、いも類が73%となっております。言うなれば、これらが28%しかない穀物類の自給率を後押しし、全体で38%という数字をようやく維持しているのです。

しかしながら、近年、鳥インフルエンザの感染拡大による殺処分などで飼育羽数の減少などが影響し、採卵数も少なからず影響を受けている状況もありますから、他の70%以上ある品目だって、いつまでも安泰だと楽観視できません。

ましてや営農者の平均年齢は68歳まで高齢化が進んでいます。バブル期だった1990年には500万人いた農業者も30年が経過した今、140万人まで減少している現状を見て、危機感を覚えない人は居ないでしょう。

暗いデータばかり並べ立て不安をあおるような内容になってしまいましたが、こうした現状を見て、自分は農業再生の捨て駒になろうという覚悟で脱サラして専業農家の道を歩み始めました。

現実の統計数字を見れば、自分が就農してから現在まで状況は悪化の一途を辿っているわけですから、捨て駒のつもりが現実味を帯びてきているのかもしれません。しかしながら農業という職業は、工夫次第で十分収益を上げることは可能であるし、それ以上に金銭に換えがたい大きな生きがいを見つけられる仕事ではないかと思っています。そしてそれは、本当の意味で人間らしい生き方を学べる仕事でもあると感じます。

常に土と触れ、向き合うなかで、宇宙の存在を肌で感じながら取り組める仕事は、宇宙開発関連だけでないという実感が得られます。

生物、環境、食の連携(いとなみ)は、原始から連綿と続く重要なサイクルであり、私たち人間も忘れてはいけない事だと思います。いまの日本人は土と向き合うことを忘れてしまっています。

ベランダに設置したプランター栽培でも、河川敷などにある貸し農園の家庭菜園でも構わないので、自分で食べる野菜を完全無農薬で育ててみてはいかがでしょうか。実りを収穫するときに、皆さんも食料を生み出すことがこれほど尊いものなのかということを実感できます。その気づきこそ、これからの日本の農業に光明が差すきっかけになるのではないかと期待しています。

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栗原 正德

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