私が生業としている特許図面の仕事では、担当者との打ち合わせは不可欠です。私はフリーなので電話での打ち合わせが多いですが、相手先に出向いて直接お話しを伺うこともよくあります。
説明慣れした方とは電話と、メール等で頂いた資料で十分作図可能ですが、やはり直接お会いして話をするほうが誤解は少ないですね。面と向かうと、相手の表情、しぐさを見れるので比較的細かなニュアンスのやり取りがしやすくなります。結果的に修正も少なくなります。
この仕事では図面の技術も重要ですが、説明能力も大切です。相手に伝わりにくい説明として、よく僕が”ゴミ箱をひっくり返したような説明”と表現するのがあります。お客さんとの打ち合わせの情報を、自分の頭の中で整理整頓せずいきなりドバッとぶちまけるような説明のやり方ですね。例えばフローチャートだったら、「スタート」から「エンド」に向かって段階的に順を追って説明が進行していきますが、”ゴミ箱をひっくり返す”ほうはフロー内のステップを支離滅裂に”思いついたものから”口にする・・・・という印象です。
説明が分かりやすい方は、まず、「スタート」と「エンド」が明確です。”あー、ここから出発して、最終的にここにたどり着きたいわけね!” とすぐ理解できます。大前提、大きな幹がハッキリしたところで少しずつ”枝葉”の説明をしていただけます。いきなり枝葉の説明をしても、相手は”何の話をしているのか?”となってしまいがちです。
地図を使って目的地に向かう際、最も重要なのは「今現在自分がいる位置」と「目的地の位置」です。この二つを明確にした後、ルートの選択をしていきます。目的地に向かうのが仕事のためであれば、高速道路を使い最短時間のルートを選択するでしょうし、バイクのツーリングであれば僕の場合あえて遠回りして走りごたえのある峠道を選びます。説明の方法もこの地図の例えに似ています。
僕が説明力を鍛える訓練としてよく人に勧めるのは、目の前にあるカップの形状を電話の向こう側の人に正確に伝える・・というものです。いきなり枝葉から入ってはダメです。唐突に”えーっと色はー、白っぽくてー、プラスチックっぽいやつでー。。。” は最悪です(笑) 。 この場合大前提は”これからカップの話をします”です。
そのカップはコーヒーカップで、喫茶店でよくでてくる皿にのったやつで、色は白、材質は陶器。。。このあたりで、相手の頭の中にコーヒーカップのイメージが出来上がり始めます。 次に詳細な説明。側面視は台形を180度回転したもので、口をつける上端部の直径は約8cm、皿と接触する下端部の直径5cm、高さ6cm程度。。。
こういう整理された説明だと誤解がグッと減ってきます。図面屋は誤解や勘違いによる修正や描き直しを何度も経験しているので、説明能力は重視するんですよね。