一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

ゲームにおいて、ストーリーや世界観を深く伝える上でカットシーンは欠かせない要素です。これらはプレイヤーを物語に没入させ、キャラクターの感情や背景、そして次に何をすべきかを認識させるための重要な役割を担っています。映画的な演出や迫力ある映像は、ゲーム体験を格段に豊かなものにしてくれます。

しかし、その一方でカットシーンはゲームプレイと相反する側面も持ち合わせています。プレイヤーが操作を中断させられ、ただ映像を見ているだけの時間が長すぎると、「早く続きをプレイしたい」という気持ちを削ぎ、結果的にゲームプレイのテンポを損なう結果になりかねません。
昨今のAAAタイトルの中には、ゲームを起動してから実際に操作できるまでの導入部分、つまり最初のチュートリアル的なカットシーンやイベントが長く、プレイヤーが少し疲れてしまうような印象を受けることもあります。

ゲームをプレイされている皆さんも、長い導入で少し億劫になった経験はありませんか?


 

カットシーンの理想的な長さは、まさに「程よい尺感とテンポ」に尽きます。物語の核心を伝えつつ、プレイヤーの集中力が途切れないギリギリのバランスを見つけることが重要です。
長すぎるカットシーンはゲームのテンポを決定的に損ないます。そこで重要になるのが、カットシーンの「使い分け」です。
全てがこのケースに当てはまるわけではありませんが、
アクションの合間や場面転換に挿入し、テンポを崩さずに緊張感を高める「短いカットシーン」と重要なドラマや設定の開示など、物語のターニングポイントに絞って使用する「長いカットシーン」を明確に分けることで、ストーリーの深さとゲームプレイのリズムの両立を図れると考えています。


 

近年、このジレンマを解決するアプローチとして、カットシーンとゲームプレイがシームレスに繋がり、プレイヤーを立ち止まらせすぎない流れを作る工夫が増えてきています。カットシーンの演出がそのまま操作パートに移行したり、映像中にインタラクティブな要素を組み込んだりすることで、没入感を途切れさせない手法です。

こうした演出は、単に映像を流すよりも遥かに高度な技術と、演出の綿密な設計が求められ、実装にはそれなりのコストと課題を伴います。それでもなお、プレイヤーの「遊びたい」という気持ちを最優先し、ストーリーとゲームプレイの理想的な融合を目指す開発者たちの努力が、現代のゲーム体験をより豊かにしていると言えるでしょう。
この絶妙なバランスこそが、今後のゲーム体験の質を決める大きな要素となりそうです。私たちが何気なく見ているカットシーンの「尺感」や「使い分け」の裏側には、開発者たちの深い意図と、技術的な挑戦が詰まっています。

次にゲームをプレイされる際は、ぜひカットシーンの裏側にあるこうした意図にも少し目を向けてみてください。きっと、物語の楽しみ方が一段と深まるはずです。

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morinaga

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