一般社団法人 全国個人事業主支援協会

COLUMN コラム

触覚は運動の速度や反力、抵抗を認知する上で欠かせない感覚である。進化の過程から振り返ると、触覚は水圧を感じるためのセンサーだった 。原点としては平衡感覚と近いものがあり、圧力センサーが耳に収斂されたものが前庭、皮膚に拡散したものが触覚と考える事ができる。
触覚は、対象物が自己にとって有益か有害か、強い圧力か弱い圧力かを判断する「原始系」と、触れたものの形状や素材、硬さ等を判断する「識別系」に大別される。現代社会においては、触覚はその機能のほとんどが識別系として働いているが、大脳が未発達な子供の世界では原始系こそが触覚の主役である。
原始系触覚の機能は”fight or flight”であり、捕食できるものと逃避すべきものを判断する事にある。これは自律神経系が触覚情報を基にして働いている事を表している。触覚の発達は、哺乳類以前の生物にとっては単に”fight or flight” の役割を支えるに過ぎないが、哺乳類では「触れられる事で安心する」 という情動や、そこから芽生える愛着・共感という人間らしさの形成に関わっている事が知られている。生まれてから人間は保護者の庇護のもと生活し、能動的な移動さえままならない。親は、子供を抱いて生活する。そして、子供は抱かれる事で触覚を受容し、自己の形態を認識していく。
自己の形状の認識は、原始反射かが統合され随意運動を習得する過程で役立つ。手足を動かし、転がる。移動する。外界に対し何らかの働きかけが生まれ、自己の形状認識が強化される。寝返りも、床面に対し自分の身体を押し付け、支点を作ってできるようになっていくが、床面から得る触覚で、自己の重さや形を認識していくのだ。

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S.N

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